...元々は君たちが悪い...
海野十三 「大宇宙遠征隊」
...九月十八日に、相州さまがそのお宅に広元入道さまをこつそりお招きになり、どうも困りました、いや将軍家の事ですが、和歌管絃の御風流にも、もういい加減厭きて来たと見えて、このごろはまた、官位の御陞進に御熱中で、しばしば京都へ除書の御催促さへなさいますやうで、実にどうも、みつともなく、あれでは京都の御所のお方たちも呆れてゐるでせう、幕府の威信を保つ上からも、面白くない事です、故右大将家はさすがに御聡明で官位の宣下のある度毎に固く御辞退申上げたもので、これはここだけの話ですが、正二位も大納言も、幕府の私どもにはいそいで頂戴の必要もなく、名よりは実ですから、征夷大将軍一つでたくさんな筈なのに、どういふものですか、当代は、むやみに京都をお慕ひになつて、以前はこれほどでも無かつたのですが、京都の御所の事となると何でもかでも有難くてたまらない様子で、こんな工合では必ず御所のお方たちに足もとを見すかされ、結局、幕府があなどられ、たいへんな事になります、どうもこのたびの御道楽は、たちが悪い、私から将軍家に申し上げてもいいのですが、どうも私は口不調法の短気者と来てゐるので、まづい事を言つて、ただ将軍家を怒らせてしまつてもつまらないし、ここは一つ、あなたのれいの上品な遠廻しの御弁舌におたよりしたいところのやうです、とにこりともせず、広元入道さまのお顔を射るやうにまつすぐに見つめながら申しまして、入道さまは狼狽の気味、いや恐縮です、とおつしやつて二つ三つ空咳をなさつて、その事に就いては、と大袈裟に膝をすすめ、私も日頃ひとしれず悩んでゐない訳ではございませんでした、とやつぱり煮え切らないやうな言ひ方で、まことに之は困つたやうな事でございまして、故右大将家に於いては、いやしくも京都に関する事ならば、この京育ちの私にいちいち御下問がございまして、私も及ばずながら何かと愚見を開陳いたしたものでございましたが、当代に於いては、さつぱり私に御下問なさいません、さうして御自分のお考へだけでどしどし京と御交通なさいますので、私は、ただお傍ではらはらして拝見してゐるばかりでございましたところへ持つて来て、今日のあなたのお言葉、いや有難う存じました、よろしうございます、必ずおいさめ申しませう、ただし之は、とふいとお声を落して、お首を傾け、どうしたものでございませう、あなたの御使として御諫言申し上げた方が、ききめもよろしいかと存ぜられますが、とれいの御責任をおのがれになる御工夫、相州さまは、平気でうなづき、ここに御密談がまとまつたやうな次第で、もちろん之は私が、のちにいろいろの人から聞いて、たぶんかうでもあつたらうかと思はれるままにお話申し上げたのでございますから、その辺はよろしく御斟酌の程をお願ひ申し上げます...
太宰治 「右大臣実朝」
...ダンサアの恋人でも出来たんでしょうよ」「直さんたら、まあ、お酒の上にまた女だから、始末が悪いね」「先生のお仕込みですもの」「でも、直さんのほうが、たちが悪いよ...
太宰治 「斜陽」
...何も自分たちが悪いからではない...
豊島与志雄 「エミリアンの旅」
...一番たちが悪いんです...
豊島与志雄 「女と帽子」
...別にわたしたちが悪いことをしたというわけではないが...
中里介山 「大菩薩峠」
...たちが悪いよ」「そういうわけじゃねえんだ...
中里介山 「大菩薩峠」
...たちが悪いです...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...少々たちが悪いようだ...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...Kにはほかの者たちのうちとけぬ態度よりもたちが悪いもののように思えたし...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「城」
...どうもこの辺の奴はたちが悪い...
火野葦平 「花と龍」
...これから、気をつけます」「どうも、たちが悪い...
火野葦平 「花と龍」
...……たちが悪いや!」と...
宮本百合子 「刻々」
...私たちが悪いんだわ...
山川方夫 「一人ぼっちのプレゼント」
...赤鬼よりたちが悪いぜ」「そういうわけで...
山本周五郎 「さぶ」
...だから町内の子たちが悪いと云うんじゃあないんです...
山本周五郎 「ちいさこべ」
...「おれたちが悪い事をしているのじゃない...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...実際の景色やぼんやりした印象だけでも十分たちが悪いのに...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「時間からの影」
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