...それかあらぬか、あとで新聞通信報道関係の人、三十数名と一緒にジャングルの中にかくれた時にも、私だけはデングにもマラリアにもかからなかった...
石川欣一 「可愛い山」
...女房はそれかあらぬか...
泉鏡花 「海異記」
...それかあらぬか、此一箇月許りの間、南天垣の外に蹄の跡が絶えて居つたのが、今日は日の暮近くに突然又目馴れた葦毛の駒が垣根の外に現はれた...
伊藤左千夫 「古代之少女」
...それかあらぬか佐助は十八歳の冬から改めて主人の計らいに依って春松検校の門に這入(はい)ったすなわち春琴が直接教授することを封(ふう)じてしまったのである...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...それかあらぬか、左大臣は御簾のうちにある北の方の顔を、何とかして見届けようとする如く、探るような瞳を挙げてしきりにキョロ/\するのであった...
谷崎潤一郎 「少将滋幹の母」
...それかあらぬか夏うぐひすのつかれし調(しらべ)...
永井壮吉 「偏奇館吟草」
...それかあらぬか、猫の瞳孔が紋(ママ)むやうに、海は急劇に曇つて来て、今にも時化(しけ)でもやつて来さうだ...
中原中也 「海の詩」
...それかあらぬか彼はただ徒らに気を弱くされてゐた...
中原中也 「思ひ出す牧野信一」
...それかあらぬかと打仰(うちあお)げば...
森鴎外 「文づかひ」
...それかあらぬか、さる富豪が二十何年同じ麦稈帽を冠ったというので、新聞に大々的に推賞されたのは、どれ位彼れ等の参考になった事であろう...
夢野久作 「街頭から見た新東京の裏面」
...それかあらぬか、記者が東京の職業婦人の新スタイルを見て仰天して帰って来て見ると、こはいかん、ツイ一ヶ月ばかり前まで気ぶりも見えなかった福岡の淑女令夫人達が、堂々とその風(ふう)を輸入して、得意然と大道を練り歩いて御座る...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...それかあらぬか、ここのお客には凄いのが多い...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...それかあらぬか、彼のいる幕囲(かこい)に近いところから、突如として、大太鼓の音が、勇壮な階調をもって、つづけさまに鳴りとどろいた...
吉川英治 「上杉謙信」
...それかあらぬか、将軍をお招きした夜、それとなく私とあなたとを会わせて賜わりましたから、私は、ひとたび、あなたにお目にかかると、これで平生の願いもかなうかと、その夜から、夢にも見るほど、楽しんでおりました」「ウむ...
吉川英治 「三国志」
...それかあらぬか、彼はさっそく後閣を訪ねて、何か夫人と囁きあっていた...
吉川英治 「三国志」
...それかあらぬかここ数日間...
吉川英治 「三国志」
...それかあらぬか、老公が西山へ帰ってのちも、江戸にあった藤井紋太夫は、およそ二十日余りも、病気ととなえて自分のやしきにひき籠っていた...
吉川英治 「梅里先生行状記」
...それかあらぬか、彼は遽(にわか)に、炯々(けいけい)たる眼ざしをして、「――実は、このたび自分が東国へ下って来たのは、わたくし事ではなく、宮方(みやかた)の令旨(りょうじ)をおびて、諸州の武人がどんな考えでおるか、密(ひそ)かに東国の動向を糺(ただ)しに来たわけでおざる」と、厳かに云い出した...
吉川英治 「源頼朝」
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