...――トウルゲネフはその瞬間...   
芥川龍之介  「山鴫」 
...おそらくはその瞬間に彼女の空想に映じた...   
池谷信三郎  「橋」 
...彼はその瞬間、金二千両の天目茶碗を失った代りに、自分の心の落着きをしかと取り返すことが出来たように思って、昂然と胸を反らした...   
薄田泣菫  「艸木虫魚」 
...その瞬間大臣といふものは...   
薄田泣菫  「茶話」 
...さりながら……」遠州はその瞬間...   
薄田泣菫  「利休と遠州」 
...しかし勝ち誇るその瞬間の心にはもう罅が入っています...   
高浜虚子  「俳句の作りよう」 
...が、その瞬間、また突然頭に閃(ひらめ)いたのは、ゼヒゼヒイラシテクダサイ、オマチシテオリマスという葉書も、そのまた前の葉書も手紙も、ことごとく東京で、ジーナやスパセニアの姿を見た以前のものばかりで、それ以来は何にも受け取っていないということだったのです...   
橘外男  「墓が呼んでいる」 
...その瞬間の印象によびさまされた感動に随喜の涙を流した...   
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」 
...その瞬間に真理という真理を一時に試したんでございますよ...   
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」 
...そうして、その瞬間に、使われ人としての自分でなく、女性としての己(おの)れを発見したものですから、我知らず狼狽して、ホッと上気してしまったこの心持が、自分ながらわからない...   
中里介山  「大菩薩峠」 
...すると今まで過冷却の状態にあった唾の滴はその瞬間に凍って...   
中谷宇吉郎  「雪雑記」 
...その瞬間妾は人間が眼をもって生まれたことを呪(のろ)った...   
平林初之輔  「オパール色の手紙」 
...その瞬間まで殆ど感じてゐなかつた眠たさを急に感じだすのである...   
堀辰雄  「眠れる人」 
...フィールデンはその瞬間...   
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「本命馬」 
...その瞬間彼は、不覚にも左の義眼のことを忘却して手荒く突いた...   
牧野信一  「水車小屋の日誌」 
...その瞬間に閃(ひらめ)くように山田の頭には一切が分かった...   
吉田甲子太郎  「秋空晴れて」 
...詩人ウイレムは書物のページを繰っているようなふりをし、ウイレム夫人は、鏡を出して、髪の毛をあちこち押えてみたりする、この様子だと、彼らはその瞬間、朗読のあることを忘れているとしか思えない...   
ルナアル Jules Renard 岸田国士訳 「ぶどう畑のぶどう作り」 
...そうしてその瞬間に私は彼を喝采する心持ちになっている...   
和辻哲郎  「転向」 
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