...――『その昔(かみ)...
石川啄木 「詩」
...その昔相許した二人が...
伊藤左千夫 「水害雑録」
...というのは、博士はその昔、研究所長として、はなはだ横柄(おうへい)であった...
海野十三 「超人間X号」
...その昔のマジノ要塞にしても...
海野十三 「二、〇〇〇年戦争」
...しかし悲しむべきことには一方に妻子を控えていた余は決してその昔し――道灌山以前に――余が居士の周囲に影の濃かった時代に比べると何処(どこ)となく不純なところがあった...
高浜虚子 「子規居士と余」
...その昔故人からたいへん世話になったという豪商の野崎氏が...
豊島与志雄 「塩花」
...その昔、芝居茶屋の混雑、お浚(さら)いの座敷の緋毛氈(ひもうせん)、祭礼の万燈(まんどう)花笠(はながさ)に酔(え)ったその眼は永久に光を失ったばかりに、かえって浅間しい電車や電線や薄ッぺらな西洋づくりを打仰ぐ不幸を知らない...
永井荷風 「深川の唄」
...その昔のような辻斬の脅威がなくなってしまったことだけでも...
中里介山 「大菩薩峠」
...だが、御本堂へはひとつ、その昔、一夜の宿をお貸し下すったお礼を述べずばなるまい...
中里介山 「大菩薩峠」
...大方あの御縫(おぬい)さんて人の宅(うち)なんでしょう」御縫さんの嫁(かたづ)いた柴野(しばの)という男には健三もその昔会った覚(おぼえ)があった...
夏目漱石 「道草」
...主人のおやじはその昔場末の名主であったから...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...嬉しさの与へ手はその昔...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...と言っても、その昔は、もう僕の記憶にない程、遠いことなので、ハッキリは言えない...
古川緑波 「神戸」
...それからそれへとその昔の頃の事を一しょになって思い出しながら...
堀辰雄 「かげろうの日記」
...さればその昔し尊王を唱え攘夷(じょうい)を説き...
三宅花圃 「藪の鶯」
...三、その昔、ユミールに住みし世は海も、冷たき浪も、砂もなく大地も未だなくその上に蒼穹(おほぞら)もおほはざりき...
宮原晃一郎 「スカンヂナヴィア文學概觀」
...その昔は下士や軽輩の士分の者だ...
三好十郎 「斬られの仙太」
...私は純粋小説は、今までの純文学の作品を高めることではなく、今までの通俗小説を高めたものだと思う方が強いのであるが、しかし、それも一概にそのようには云い切れないところがあるので、純文学にして通俗小説というような、一番に誤解される代りに、聡明(そうめい)な人には直ちに理解せられる云い方をしてみたのだけれども、それはさておき、近代小説の生成というものは、その昔、物語を書こうとした意志と、日記を書きつけようとした意志とが、別々に成長して来て、裁判の方法がつかなくなったところへもって、物語を書くことこそ文学だとして来て迷わなかった創造的な精神が、通俗小説となって発展し、その反対の日記を書く随筆趣味が、純文学となって、自己身辺の事実のみまめまめしく書きつけ、これこそ物語にうつつをぬかすがごとき野鄙(やひ)な文学ではないと高くとまり、最も肝要な可能の世界の創造ということを忘れてしまって、文体まで日記随筆の文体のみを、われわれに残してくれたのである...
「純粋小説論」
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