...卑しくも私の趣味性を唆(そそ)るものあらば座右に備えて悠々自適(ゆうゆうじてき)し...
淡島寒月 「亡び行く江戸趣味」
...激流からそそり立つ高さ十五フィート直径二フィートの大きな石柱で支持されている...
エドワード・シルヴェスター・モース Edward Sylvester Morse 石川欣一訳 「日本その日その日」
...泰助に眼を注(そそ)ぎて...
泉鏡花 「活人形」
...そそつかしやの奴! お前はどうして蛛網の上を越すか...
アンリイ・ファブル Jean-Henri Fabre 大杉栄、伊藤野枝訳 「科学の不思議」
...堅牢な函板は簓(ささら)のように木膚がそそけ立っていた...
橘外男 「ウニデス潮流の彼方」
...酒を瀝(そそ)いで祝してくれ」家内の者は大異の言う通り紙筆を棺の中へ入れたところで...
田中貢太郎 「太虚司法伝」
...そしてそれを沢山の花圃(はなばたけ)や植木に漑(そそ)がなければならなかった...
徳田秋声 「あらくれ」
...兄に唆(そその)かされて行った頃の暗い悲しい心持などは...
徳田秋声 「あらくれ」
...登録労働者こそその良い例なのであって...
戸坂潤 「社会時評」
...水をそそいでやりますと...
豊島与志雄 「必要以上のもの」
...九月の晴れた日にそそのかされて...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...全力をそそいだ専制主義の政府であった...
蜷川新 「天皇」
...麥はさ青に延び行けり遠き畑の田作りの白き襦袢にえんえんと眞晝の光ふりそそぐ九月はじめの旅立ちに汽車の窓より眺むれば麥の青きに驚きて疲れし心が泣き出せり...
萩原朔太郎 「麥」
...一廻れば大門(おほもん)の見返り柳いと長けれど、お歯ぐろ溝(どぶ)に燈火(ともしび)うつる三階の騒ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行来(ゆきき)にはかり知られぬ全盛をうらなひて、大音寺前(だいおんじまへ)と名は仏くさけれど、さりとは陽気の町と住みたる人の申き、三嶋神社(みしまさま)の角をまがりてよりこれぞと見ゆる大厦(いゑ)もなく、かたぶく軒端(のきば)の十軒長屋二十軒長や、商ひはかつふつ利(き)かぬ処(ところ)とて半(なかば)さしたる雨戸の外に、あやしき形(なり)に紙を切りなして、胡粉(ごふん)ぬりくり彩色(さいしき)のある田楽みるやう、裏にはりたる串(くし)のさまもをかし、一軒ならず二軒ならず、朝日に干して夕日にしまふ手当ことごとしく、一家内これにかかりてそれは何ぞと問ふに、知らずや霜月(しもつき)酉(とり)の日例の神社に欲深様(よくふかさま)のかつぎ給(たま)ふこれぞ熊手の下ごしらへといふ、正月門松とりすつるよりかかりて、一年うち通しのそれは誠の商買人、片手わざにも夏より手足を色どりて、新年着(はるぎ)の支度もこれをば当てぞかし、南無(なむ)や大鳥大明神(おほとりだいめうじん)、買ふ人にさへ大福をあたへ給へば製造もとの我等万倍の利益をと人ごとに言ふめれど、さりとは思ひのほかなるもの、このあたりに大長者のうわさも聞かざりき、住む人の多くは廓者(くるわもの)にて良人(おつと)は小格子(こがうし)の何とやら、下足札そろへてがらんがらんの音もいそがしや夕暮より羽織引かけて立出(たちいづ)れば、うしろに切火(きりび)打かくる女房の顔もこれが見納めか十人ぎりの側杖(そばづえ)無理情死(しんぢう)のしそこね、恨みはかかる身のはて危ふく、すはと言はば命がけの勤めに遊山(ゆさん)らしく見ゆるもをかし、娘は大籬(おほまがき)の下新造(したしんぞ)とやら、七軒の何屋が客廻しとやら、提燈(かんばん)さげてちよこちよこ走りの修業、卒業して何にかなる、とかくは檜舞台(ひのきぶたい)と見たつるもをかしからずや、垢(あか)ぬけのせし三十あまりの年増(としま)、小ざつぱりとせし唐桟(とうざん)ぞろひに紺足袋(こんたび)はきて、雪駄(せつた)ちやらちやら忙がしげに横抱きの小包はとはでもしるし、茶屋が桟橋とんと沙汰(さた)して、廻り遠(どほ)や此処(ここ)からあげまする、誂(あつら)へ物(もの)の仕事やさんとこのあたりには言ふぞかし、一体の風俗よそと変りて、女子(おなご)の後帯(うしろおび)きちんとせし人少なく、がらを好みて巾広(はばびろ)の巻帯、年増はまだよし、十五六の小癪(こしやく)なるが酸漿(ほうづき)ふくんでこの姿(なり)はと目をふさぐ人もあるべし、所がら是非もなや、昨日(きのふ)河岸店(かしみせ)に何紫(なにむらさき)の源氏名(げんじな)耳に残れど、けふは地廻りの吉(きち)と手馴れぬ焼鳥の夜店を出して、身代たたき骨になれば再び古巣への内儀(かみさま)姿(すがた)、どこやら素人(しろうと)よりは見よげに覚えて、これに染まらぬ子供もなし、秋は九月仁和賀(にわか)の頃の大路を見給へ、さりとは宜(よ)くも学びし露八(ろはち)が物真似、栄喜(ゑいき)が処作(しよさ)、孟子(もうし)の母やおどろかん上達の速(すみ)やかさ、うまいと褒(ほ)められて今宵(こよひ)も一廻りと生意気は七つ八つよりつのりて、やがては肩に置手ぬぐひ、鼻歌のそそり節、十五の少年がませかた恐ろし、学校の唱歌にもぎつちよんちよんと拍子を取りて、運動会に木(き)やり音頭もなしかねまじき風情(ふぜい)、さらでも教育はむづかしきに教師の苦心さこそと思はるる入谷(いりや)ぢかくに育英舎とて、私立なれども生徒の数は千人近く、狭き校舎に目白押の窮屈さも教師が人望いよいよあらはれて、唯(ただ)学校と一ト口にてこのあたりには呑込(のみこ)みのつくほど成るがあり、通ふ子供の数々に或(あるひ)は火消鳶人足(ひけしとびにんそく)、おとつさんは刎橋(はねばし)の番屋に居るよと習はずして知るその道のかしこさ、梯子(はしご)のりのまねびにアレ忍びがへしを折りましたと訴へのつべこべ、三百といふ代言の子もあるべし、お前の父(とと)さんは馬だねへと言はれて、名のりや愁(つ)らき子心にも顔あからめるしほらしさ、出入りの貸座敷(いゑ)の秘蔵息子寮住居(りようずまゐ)に華族さまを気取りて、ふさ付き帽子面(おも)もちゆたかに洋服かるがると花々しきを、坊ちやん坊ちやんとてこの子の追従(ついしよう)するもをかし、多くの中に龍華寺(りうげじ)の信如(しんによ)とて、千筋(ちすぢ)となづる黒髪も今いく歳(とせ)のさかりにか、やがては墨染(すみぞめ)にかへぬべき袖(そで)の色、発心(ほつしん)は腹からか、坊は親ゆづりの勉強ものあり、性来(せいらい)をとなしきを友達いぶせく思ひて、さまざまの悪戯(いたづら)をしかけ、猫の死骸(しがい)を縄にくくりてお役目なれば引導をたのみますと投げつけし事も有りしが、それは昔、今は校内一の人とて仮にも侮(あなど)りての処業はなかりき、歳(とし)は十五、並背(なみぜい)にていが栗の頭髪(つむり)も思ひなしか俗とは変りて、藤本信如(ふぢもとのぶゆき)と訓(よみ)にてすませど、何処(どこ)やら釈(しやく)といひたげの素振(そぶり)なり...
樋口一葉 「たけくらべ」
...斑魚(はんぎょ)の鱗(うろこ)のようにそそけ立った...
吉川英治 「三国志」
...たとえ尊氏が光厳(こうごん)(持明院統の先帝)をそそのかして...
吉川英治 「私本太平記」
...信勝にそそいだ眼を...
吉川英治 「新書太閤記」
...師の冤(えん)をそそぎ奉る遺弟の弔(とむら)い合戦だわ...
吉川英治 「宮本武蔵」
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