...そこにはもうそこはかとなく夜の闇がたゞよひはじめてゐる...
有島武郎 「秋」
...顔洗ふ間もそのことをそこはかとなく思ひしが...
石川啄木 「詩」
...二人はそこはかとなく逍遙(さまよ)うた...
石川啄木 「鳥影」
...心はそこはかとなく動いて...
石川啄木 「鳥影」
...そこはかとなく搖めいた...
石川啄木 「鳥影」
...そこはかとなくそこらをかたづける...
種田山頭火 「其中日記」
...(木炭がないので)焚火しながら、そこはかとなく、とりとめもないことを思ひつゞける、焚火といふものはうれしい...
種田山頭火 「其中日記」
...畝傍御陵・松老いて鴉啼くなり橿原神宮・この松の千代に八千代の芽吹いてみどり・みたらし噴く水のしづかなる声・旅もをはりの尿の赤く枯れきつてあたゝかな風ふくあすは雨らしい風が麦の穂の列ぽろり歯がぬけてくれて大阪の月あかりぬけた歯はそこら朝風に抜け捨てゝ一人もよろしい大和国原そこはかとなく若い人々のその中に私もまじり春の旅白船君からのたよりでは...
種田山頭火 「旅日記」
...そこはかとなく散る木の葉の音...
種田山頭火 「『鉢の子』から『其中庵』まで」
...松蕈(まつたけ)の香(かぐ)はしき薫氣(かほり)はそこはかとなくあたりに滿てるにあらずや...
田山花袋 「秋の岐蘇路」
...そこはかとなく漂っていたのであった...
久生十蘭 「魔都」
...そこはかとなく胸に迫つて来るかのやうだ...
牧野信一 「真夏の夜の夢」
...そこはかとなく撒(ま)き散らされていた...
夢野久作 「髪切虫」
...高い南洋植物があたりをつつみ、温室の花の香が、そこはかとなく、闇にただよってもいるし……...
吉川英治 「かんかん虫は唄う」
...そこはかとなく、源氏の香気や情景をあのように、聞く者に感じさせるには、それが充分に、読み手自身に分っているのでなければできないことだ...
吉川英治 「新書太閤記」
...何がな作家の幻想をしきりに駆りたてられ、私の雑然たる書斎にも、そこはかとなく、当時の社会的な匂いや、人間像の群影が、机辺を往来する...
吉川英治 「随筆 新平家」
...……もう、桔梗のいた奥の館も、和子の乳の香がしみていた部屋も、あとかたはなく新しい木の香になってしまったが、それでも、豊田の家に眠っていると、そこはかとなく、在りし日のことが夢にも通ってくる...
吉川英治 「平の将門」
...わすれぬうちにそこはかとなくかきつくるれうのさうし」...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
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