...時しも、鬱金(うこん)木綿が薄よごれて、しなびた包、おちへ来て一霜(ひとしも)くらった、大角豆(ささげ)のようなのを嬉しそうに開けて、一粒々々、根附だ、玉だ、緒〆(おじめ)だと、むかしから伝われば、道楽でためた秘蔵の小まものを並べて楽しむ処へ――それ、しも手から、しゃっぽで、袴(はかま)で、代書代言伊作氏が縁台の端へ顕(あら)われるのを見ると、そりゃ、そりゃ矢藤さんがおいでになったと、慌(あわただ)しく鬱金木綿を臍(へそ)でかくす……他なし、書画骨董の大方を、野分のごとく、この長男に吹さらわれて、わずかに痩莢(やせざや)の豆ばかりここに残った所以(ゆえん)である...
泉鏡花 「開扉一妖帖」
...しなびた両手をあげた...
海野十三 「鞄らしくない鞄」
...しなびた顔にじっと見入っていた――...
海野十三 「地獄の使者」
...しなびたように色をうしなって...
江戸川乱歩 「怪人二十面相」
...見るかげもなく萎えしなびた...
太宰治 「道化の華」
...◆三月一日発行『川柳人』二五七号自由旗の下に鶴 彬しなびた胃袋にやらう鬼征伐のキビ団子!×かまきりの斧をぶんどる蟻の屍(シカバネ)×工場へ! 学校へ!わかれて行けといふ道だ!×杭うちのどひゞきよあゝ...
鶴彬 「鶴彬全川柳」
...少し歩いてからしなびた紅(べに)の花殻(はながら)をやはり二三本藁包(わらづと)にしたのを買った...
寺田寅彦 「試験管」
...しなびた草がそこかしこに生え散らかっていた...
アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 大久保ゆう訳 「緋のエチュード」
...そのしなびたものを見かけるくらいである...
豊島与志雄 「「自然」」
...その跡には雌の蟋蟀がしなびたようになって這っていた...
林芙美子 「泣虫小僧」
...「なつかしい唄だ!」しなびた頬に血の色がさし...
久生十蘭 「キャラコさん」
...」しなびた老婆は彼女の帽子と紐の下で...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...このしなびた茶色の花びらが重要なことは言うまでもありません...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「諜報部秘話」
...肉欲の中に溶けしなびた我々の理性はとうていその役目を果すことができないかのように...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...どこかしら歪(ゆが)んだしなびたような躯つきの...
山本周五郎 「雨あがる」
...しなびたような弥市が...
山本周五郎 「似而非物語」
...顔も体もしなびたように小さい...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...その小さなしなびた男に引いてゆかれることになつても...
ジャック・ロンドン Jack London 山本政喜訳 「荒野の呼び声」
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