...あなたはこの際、是非弁明をなさる必要があります」刑事部長が宗像博士をキッと見つめながら、厳然たる警察官の口調で云った...
江戸川乱歩 「悪魔の紋章」
...美術通を以て任ずる高田文相はこの際同校に思ひ切つた革新が施して貰ひたい...
薄田泣菫 「茶話」
...この際ここを早く立ち去ってくれるに越したことはないと...
ストックトン Francis Richard Stockton 岡本綺堂訳 「世界怪談名作集」
...この際お春とお久とを日光見物に行かしてやりたいがどうであろう...
谷崎潤一郎 「細雪」
...これについてははなはだ僣越(せんえつ)ながらこの際一般工学者の謙虚な反省を促したいと思う次第である...
寺田寅彦 「天災と国防」
...この際少しお金をあげたいと思う...
徳田秋声 「仮装人物」
...私はまず手近から生産力という力をこの際思い出す...
戸坂潤 「技術と科学との概念」
...ただこの際には、個人的に見られた彼の政治活動――即ち彼の人間生活――は、人間的経験によって裏付けられている、という一種の認識過程にぞくする一側面が展開してくる...
戸坂潤 「技術の哲学」
...この際の政党のデマゴギーはすべてこの挙国一致というものから演繹されるわけだ...
戸坂潤 「現代日本の思想対立」
...この際今まで述べて来た批判の三つの段階に相当する三つの相が区別される...
戸坂潤 「日本イデオロギー論」
...そう言われるとこの際...
中里介山 「大菩薩峠」
...それを、親方のお角が、何でこんなに身を入れて、弁護するのだかわからないが、うっかりその殿様の悪口(あっこう)をいえば、親方の御機嫌がこの通りに損(そこな)われるということだけは、この際、ハッキリと経験したから、以後は自分も慎み、朋輩(ほうばい)にも申し聞けておかねばならぬという戒慎の心だけは起ったらしい...
中里介山 「大菩薩峠」
...その力を借りて、押しきって行けば、何のちょうはんの一人や二人、事も雑作(ぞうさ)もあるものではない、とお角さんが張りきってこのことを伊太夫に申し出ると、伊太夫もこの際、一応はそれを承認しました...
中里介山 「大菩薩峠」
...この際そう云う大胆な行動を妨たげるものは...
夏目漱石 「彼岸過迄」
...この際、旦那、如何です、禁煙などなさっては? 夜の部、入りよし、芝居は全くつまらなくなったのに...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...この際に古雛を送り流し...
柳田国男 「年中行事覚書」
...この際、一ぱいの茶は、この方として最高な武門の礼を執(と)ったつもりじゃ...
吉川英治 「新書太閤記」
...この際、声をだすのは自殺するのと同じわけになる...
吉川英治 「鳴門秘帖」
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