...秋近し!電燈の球(たま)のぬくもりのさはれば指の皮膚(ひふ)に親しき...
石川啄木 「悲しき玩具」
...晴(はれ)、曇(くもり)、又(また)月(つき)となり、風(かぜ)となり――雪(ゆき)には途絶(とだ)える――此(こ)の往來(わうらい)のなかを、がた/\俥(ぐるま)も、車上(しやじやう)にして、悠暢(いうちやう)と、花(はな)を見(み)、鳥(とり)を聞(き)きつゝ通(とほ)る...
泉鏡太郎 「麻を刈る」
...長らくのくもりもようやくうすらいで...
伊藤左千夫 「老獣医」
...その栄介の背中の石膏帯はかすかなぬくもりを残しながら...
梅崎春生 「狂い凧」
...くもりガラスのような光沢(こうたく)のない眼球……死骸だ...
江戸川乱歩 「黒蜥蜴」
...むらがる手空はかたちもなくくもり...
大手拓次 「藍色の蟇」
...窓へのぞいて柿の若葉よ播いてゐるときほとゝぎす・ほとゝぎすがなけば鴉も若葉のくもり身のまはりかたづけてさみしいやうな仲よく空から梅をもいでは食べ・伸びぬいて筍の青空・あてなくあるくや蛇のぬけがらどうしても寝つかれないで...
種田山頭火 「行乞記」
...円くもり上って宝石のような光りを持ってる...
豊島与志雄 「金魚」
...道を堰かれた波が海坊主の頭みたいに円くもりあがつてはさつと砕けてしぶきを飛ばす...
中勘助 「銀の匙」
...くもりて歩むによき日なれば午後八幡の村道を歩み水田の北方に連る丘陵に登る...
永井荷風 「荷風戰後日歴 第一」
...歌と俳諧とを論じていたところです」「どこを雪が降ると温泉にぬくもりながら...
中里介山 「大菩薩峠」
...家家の窓は煤でくもり...
萩原朔太郎 「散文詩・詩的散文」
...天井のくもり硝子(ガラス)の電燈を見つめてゐた...
林芙美子 「浮雲」
...人の眼はくもりたるものにて...
樋口一葉 「琴の音」
...眉のくもりは追ひ拂ふことにしよう...
水谷まさる 「歌時計」
...六月十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕六月十七日 第五十三信きょうの天気予報はくもり時々小雨でした...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...よう出来た……」「それでも得心せねばこの刀身(かたな)の油曇(くもり)に聞いて見いと言うたれば...
夢野久作 「狂歌師赤猪口兵衛」
...干し拡げている小豆(あずき)の中で、子を抱いて、弱々しい皮膚を陽なたに曝(さら)していたが、「おお?」振り顧(かえ)って、変ったわが子の姿を、突然そこに見ると、悲しいのか欣しいのか、彼女の顔に、一瞬、つよい感情がつきぬけて、眼は涙にくもり、顔じゅうの筋はぴくぴくふるえた...
吉川英治 「新書太閤記」
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