...何処か一脈の温かさ柔かさを湛(たた)えて居るのは...
岩本素白 「六日月」
...「…………」その年嵩(としかさ)の方の女の頬ぺたに...
梅崎春生 「狂い凧」
...だん/\家計が思はしくなくなつて後も四人の子の世話を一手でする取込んだ中に家中の内儀としての品位を保つだけのしとやかさは失はなかつた...
高濱虚子 「續俳諧師」
...すだれ越しに透かされる部屋と云う部屋には姿も見えない...
谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」
...・送つてくれたあたゝかさを着て出る(妹に)吹いても吹いても飴が売れない鮮人の笛かよ・向きあつて知るも知らぬも濁酒(ドブ)を飲む(居酒屋にて)□かきおきかいておいてさうして(述懐)一月九日雨...
種田山頭火 「行乞記」
...自分のいちばん末の姉を七歳で亡くして休日のたびに谷中(やなか)の墓地へ通ったという話を聞かされたことがあった...
寺田寅彦 「柿の種」
...短銃の音に驚かされしわが兵士ばらばらと走(は)せきたり...
徳冨蘆花 「小説 不如帰」
...「驢馬先生、おまえのこのひと言は金貨一枚だけの値打ちがあるぞ、ほんとに今日おまえにくれてやるわい、だが、そのほかのことは嘘だぞ、まっかな嘘だぞ、なあこら、おばかさん、われわれ一同がこの世で信仰を持たないのは心があさはかなからだ、なにしろ、暇がないからなあ、第一、いろんな用事にかまけてしまう、第二に神様が時間をろくろく授けてくださらないで、せいぜい一日が二十四時間やそこいらでは、悔い改めるはさておき、十分に眠る暇もないからなあ、ところが、おまえが敵の前で神様を否定したのは、信仰のことよりほかには考えられないような場合で、しかも是が非でも自分の信仰心を示さなくっちゃならないような土壇場(どたんば)じゃないかい! おいどうだ、きょうだい、一理あるだろうじゃないか?」「一理あるにはありますがね、まあ、よく考えて御覧なさい、グリゴリイ・ワシーリエヴィッチ、一理あればこそ、なおのこと、わたしにとって罪が軽くなるというものです、もしわたしが間違いのない正当な信仰を持っていたとしたら、その信仰のための受難に甘んじないで、けがらわしい回々教(フイフイきょう)へ転んだのは、全く罪深いことに違いありませんよ、しかし、それにしても、責め苦を受けるというところまではいかないで済んだはずですよ、だって、その時、眼の前の山に向かって、さあ動いて来て敵をつぶしてしまえと言いさえすれば、山は即刻動きだして、敵のやつらを油虫かなんぞのように押しつぶしてしまったはずです、そうすれば、わたしは何ごともなかったように、鼻うたでもうたいながら、神の栄光をたたえながら引き上げて行きますよ、ところが、もしその土壇場になって、そのとおりにやってみて、わたしがその山に向かって敵を押しつぶしてくれと、わざと大きな声でどなったところで、山がいっこう敵を押しつぶしてくれそうにないとしたら、わたしだってそんな恐ろしい命がけの場合に、どうして疑いを起こさずにいられるものですか? それでなくても、とても天国へなどまともに行きつけるものでないことを承知していますのに(だって、わたしの声で山が動かなかったところをみると、天国でもわたしの信仰をあまり信用してくれなさそうですから、たいした御褒美(ごほうび)があの世でわたしを待っているようにも思われませんからね)、何をすき好んで、そのうえ、役にも立たないのに自分の生皮を剥(は)がせる必要がありましょう? たとえ、もう半分背中の皮を剥がれながらわたしがどなったりわめいたりしてみたところで、山はびくともしやしませんからね、こんな瞬間には疑いが起こるくらいは愚かなこと、恐ろしさのあまりに、思慮分別もなくなるかもしれません、いや、分別を巡らすなんてことは全然不可能です、してみれば、この世でもあの世でも、自分に何の得になることでもなく、たいして御褒美にもあずかれないとわかったら、せめて自分の皮だけでも大事にしようと思ったからとて、それがいったいどれだけ悪いことでしょう? ですから、わたしは神様のお慈悲を当てにして、何事もきれいに許していただけるものと、どこまでもそう思っているのです」八 コニャクを飲みながら討論はこれで終わったが、奇態なことに、あれほど上々の御機嫌であったフョードル・パーヴロヴィッチが、終わりごろから急に苦い顔をしだした...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...彼女は頬の筋肉一つ動かさなかった...
豊島与志雄 「子を奪う」
...叔父(をぢ)の賣(う)り拂(はら)つたと云(い)ふ地面(ぢめん)家作(かさく)に就(つ)いても...
夏目漱石 「門」
...空(むな)しくも齢(よわい)をかさねたものよ...
オマル・ハイヤーム 'Umar Khaiyam 小川亮作訳 「ルバイヤート」
...自分の女房が赤恥を掻かされても平気の平左なんだからね...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...このあとをどう云つていゝかおつかさまにもわからなくなつて来た...
平出修 「夜烏」
...車掌は職権をかさに呶鳴(どな)りたてる...
牧逸馬 「戦雲を駆る女怪」
...それは緩急によって畳(かさ)ねて...
森鴎外 「あそび」
...彼はまた逆様(さかさま)になってその段々を降り出した...
横光利一 「赤い着物」
...年輪をかさねた六波羅松の松の奏(かな)でに...
吉川英治 「私本太平記」
...僧正の知識に驚かされるのであった...
吉川英治 「親鸞」
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