...そこでお里は、重い花束を左手に持ちかえて、しずしずと奥の方へ進んでいったのであった...
海野十三 「雷」
...『よくそれでもねえ!』窕子は何方ともつかないやうなことを言つて、『それでも昔の話などをなさることがございますか?』『ちつとも……』若い尼は頭を強く振つて見て、『いつもあゝして經を誦してゐられるばかりです』『それでも、東國の話などをなさるやうなことは?』『この山の中がよう似てゐるなんて言ふには言ひますけれども……そんなことはもうあまり多く考へてはゐられないやうでございますね……』『それでお里の方からは、たまには何方かがお見えになりますか?』『ところが、そのお里方にも、もはやその時分の方はいらつしやいませず、ひとり殘つてゐらつした姉の姫宮――御存じでゐらつしやいませうが、兵部卿にかたづいてゐらつした方、あの方が一年ほどはよくおたづねになりましたが、昨年おかくれになりましたので、もう何方もお出でになる方がございません...
田山花袋 「道綱の母」
...貞淑(ていしゆく)の譽高い方ぢや」「お里方は?」「西久保町の矢吹樣...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...私に一万二千両の金を一人占めさせるつもりで定五郎とお里を殺してしまったのは...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...「大丈夫ですよ、あつしは御存じの通り二階で、叔母さんは階下(した)の六疊、お里さんは、お勝手の隣の三疊に寢て居る筈だ」「その三疊には、そつと外面(そと)へ出られる口があるのか」「ありますよ、三尺の潛戸(くゞり)で」「驚くなよ、八」平次はいきなり妙なことを言ふのです...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...お里はそれつきり姿を見せず...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...お里のひはらを蹴上(けりあ)ぐ...
三木竹二 「いがみの権太」
...またお里を指して両親に頼むといふ思入あり...
三木竹二 「いがみの権太」
...そこから出て來たお里は...
水野仙子 「神樂阪の半襟」
...『まあいゝ柄!』お里はふと立ち止つて...
水野仙子 「神樂阪の半襟」
...お里だって……ほんとのこというと...
吉川英治 「松のや露八」
...お里とさし向かいに炬燵を抱いて...
吉川英治 「松のや露八」
...こっちへ寄れ、こっちへ」そして、「お里、熱(あつ)い酒(の)を、そ云ってくれ」二「どうしたい! 庄次郎」というような調子で、榊原は、その後のことを訊ねもし、また話しもして、「もう、貴様には、匙(さじ)を投げたから、俺は意見を云わんよ...
吉川英治 「松のや露八」
...己(おの)ればかり大義人道の武士顔している勤王派の百姓侍にも見せておく必要があるというものだ」お里は...
吉川英治 「松のや露八」
...「お里、窓の戸を閉めろ」健吉は、風邪薬(かぜぐすり)をのんで、蒲団を被(かぶ)った...
吉川英治 「松のや露八」
...板新道(いたじんみち)以来ずっと健吉ひとりを守り通して来ている荻江(おぎえ)のお里であった...
吉川英治 「松のや露八」
...「――いけねえ、どう考えても、お里の弟だ...
吉川英治 「無宿人国記」
...――その手で、お里も、ほかの多くの女をも、経験してきた彼は、やがて、お八重がよく町医の関口庵(きあん)の所へ通うのを知って、ある夜、わざと、「お里どの...
吉川英治 「無宿人国記」
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