...実をいふと、お高婆さんもその皮肉家の一人(にん)で、伊達太夫などは稽古のたんびに随分こつ酷(ぴど)く扱(こ)き下(おろ)されるばかりか、何(ど)うかすると、「おまはんは、食意地が張つとるよつて、そいでそないに息切(いきぎれ)がするのやし……」と、胃の腑の棚卸しまで聞かされるので、随分つらい思ひをする事があるさうだ...
薄田泣菫 「茶話」
...おまはんたちから見たら阿呆としか見えなかろうが...
久生十蘭 「魔都」
...どぶ板を、無遠慮に踏んで、路地奥にはいって、磨きの格子戸――まだ雨戸がはいっていない、小家の前に立つと、ためらわずに、「御免ねえ! ちと、急用だが――」どこまでも、無垢(むく)のものらしく住みなしている一家――ばあやが平気で出て来て、「どなたさんか? おかみさんは、ちっと用があって出て、戻りませんが――」「それじゃあ、上げて貰って待って見よう――ちっと、大事な話なんで――」ばあやは、透かして見て、遊び人が、何か筋をいいに来でもしたかと思ったか、「でも、今夜は、遅いから、あしたのことに――もう、お前さん、夜更けですよ」一九闇太郎と、婆やとの押問答が、二階に聴えたと見えて、晩酌に一本つけて貰って、女あるじ――女親分の留守の間を、楽々とごろ寝を貪(むさぼ)っていた例のむく犬の吉むくりと起き立って、鉄火な口調がまじっているので、さては、探偵手先(いっけんもの)か? それとも、弱身を知っての押しがりか? と、耳をそば立てたが、そのまま、とんとんと、荒っぽく、段ばしごを駆け下りて、「誰だ、誰だ? 何だ? 何だ? こう、小母さん、退(ど)きねえ――」と、婆やを、かきのけるように格子先を、白い目で睨(にら)んで、「おい、おまはん一てえ、どこのどなただ? よる夜中、ひとの格子をガタピシやって、どぎついことを並べるなあ、あんまりゾッとした話じゃあねえぜ!」と、まず、虚勢を張って見る...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...おまはんが決して...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...それというのも、おまはんが、程のいい人だからよ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...誰だろう? 大物に相違ないが――」「思いもかけない奴さ――おまはんには...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...おまはんに負けました――と...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...おまはんの敵であろうはずはないけれど...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...おまはんの強さというもなあ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...あの、丑、為ときちゃあ、内藤新宿でも、狂犬(やまいぬ)のようにいやがられている連中、それを、何とまあ、二人一度に征討して、外へほッぽり出してしまったのだから、おまはんの、底ぢからは、程が知れないね――ところで、法印さん――」と、茶碗を突きつけて、「ま、息つぎに、一ぱいいかが?」こやつ昔はいずれ、宿場でも叩いた上りか、年にも似合わぬ色ッぽい声でいって、銚子を取り上げる...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...おまはんの気持も読めないわけではないさ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...見たところ、豪家の一人むすめッて風俗さ――連れて行ってやりゃあ、まあ、包み金にはありつくだろうが、それでこのあたしはどうなるんですえ?」濁った目を見すえて、「このお三は、どうなるんですよう?」「いや、わしは、礼物(れいもつ)を、あてにしているわけではない――ゆきがかりゆえ、面倒見てやろうと思うばかり――」二三お三婆は、どうしても、法印の本心がわからぬというように、「ねえ、島抜けの――まさか、おまはん、本気で、うちへ連れてもどすの何のといっているのではあるまいね――若し、そんな後生気(ごしょうっけ)を出したのなら、大馬鹿ものだ」「どうしてな?」「どうしてといって、おまはんは、自分が、ソレ、天下のお訊ね者ではないか――娘がいなくなった、どこへ行った、大変だ――と、わめき立てているところへ、この女を連れて、のっそりと、あらわれて見なさいよ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...その若さで、いのちの火が消えるのなんのと――そんな、馬鹿なことを――」と、いって、「じゃあ、法印、このお人を、一あし先きに、おれのうちへ連れて行っておいちゃあくれめえか――おれの細工場へよ――」「あい、じゃあ、田圃へ、連れて行くが、おまはん、すぐに、あとから来るかね?」と、法印は、かよわい女一人をあずかっているのが、心許(こころもと)なげだ――見かけによらぬ気の弱い奴...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...おまはんの刃にかかった奴は...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...おまはんと懇意に成ってから...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「助勢が出たぞう! 気をつけろ!」「親分、おのがれなさい! あとは、わたしが引きうけますほどに――」「それよりも、おまはんの仕事、しすましたか?」と、闇太郎が、だしぬけの雪之丞の出現にもかかわらず、驚きもせずに叫んだ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...ひっかけ帯で横にすわりながらおゆきがそういうときとよく似た声の調子でおまはんと云ったとき...
宮本百合子 「菊人形」
...おまはんみたいな人がよくいう見かけ倒しという代物(しろもの)だ...
吉川英治 「新・水滸伝」
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