...一方口(いっぽうぐち)ばかし堅(かた)めたって、知らねえ中(うち)に、裏口からおさらばをきめられちゃ、いい面の皮だ...
永井荷風 「狐」
...いい面の皮でもあるが...
中里介山 「大菩薩峠」
...残されたわたしたちこそ全くいい面の皮...
中里介山 「大菩薩峠」
...いい面の皮さ」この女相当の八ツ当りを...
中里介山 「大菩薩峠」
...「へッ、いい面の皮で、親分の言った通り、見事に担(かつ)がれましたよ」「守随(しゅずい)の若旦那は無事かい」「四日間あっしと狩屋(かりや)という浪人者と、店中の腕に覚えの手代たちが十何人で見張ったが、ろくな蚤(のみ)にもさされやしません」「手紙は三本だけか」「それが不思議なんで、いっこう業(わざ)をしないくせに、脅かしの手紙だけは、毎日一本ずつ五本まで来ましたよ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...いい面の皮さ……馬鹿馬鹿しい浮世じゃないの? 今の世は真心なんてものは薬にしたくもないのよ...
林芙美子 「新版 放浪記」
...あたしなぞはいい面の皮...
久生十蘭 「魔都」
...それに知らずに乘つたボオイこそいい面の皮だ...
堀辰雄 「エトランジェ」
...その興奮の対象にされた日本太郎こそまことにいい面の皮だったともいえようし...
正岡容 「随筆 寄席囃子」
...それにしては手討になる老臣粟田主膳といふ男こそいい面の皮なれ...
三木竹二 「両座の「山門」評」
...生徒こそいい面の皮ね...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...ヘツヘヘヘ、そんな事で一々踊らされて、無けなしの金で罐詰めの道具買つたり、製板の株買つたり、ハムを作るのに資本をかけたりして益々借金ふやす百姓こそ、いい面の皮だ...
三好十郎 「地熱」
...マホメット教こそいい面の皮...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...――いい面の皮だ...
山本周五郎 「赤ひげ診療譚」
...なんだ、……なんのためにあの野郎のことなんぞ云いだすんだ、ちぇっ、よしゃあがれ縁起でもねえ」「おれの云いてえのはそんなことじゃあねえ」彼はそれまで饒舌(しゃべ)ったことを打ち消すように、ゆらゆらと首を振り、するとよろめいて、よろめいたまま道を斜めに歩きながら呟いた、「――おれは天下の岸沢蝶太夫だ、女にかけたって人にひけはとりゃあしねえ、おぼこから年増まで、娘、かみさん、後家、くろうとの差別なく、これと眼をつけておれのものにならなかった女は、一人もいなかった、こっちからもちかけるまでもねえ、捌(さば)ききれなくてげっぷの出るほど向うからもちかけて来た、それが、……あの娘、おりうに限ってこんなことになるなんて、へっ、初めて逢ってからもうすぐ一年にもなろうってのに、手を握ったのが今日が初めて、おまけにいまいましいのはこっちがのぼせてることだ」彼は立停った、「なんだ」と彼は左右を見まわした、「仲次郎がどうしたってんだ、誰だ、仲次郎がどうしたってんだ」「へっ」と首を振って、彼はまた歩きだした、「小娘のくせにのぼせるな、今日まで手も握らなかったのはな、そっちが熱くなるのを見たかったからだ、それをなんでえ、ちょっと下へおりて、小部屋へ支度をするように云って、帰るともういねえ、へっ、いい面の皮だ、こっちは小部屋の支度を頼んだんだぜ、岸沢蝶太夫ともあろう者がさ、――お伴れさまはお帰り、土産の折詰にはなまで置いてある、いいざまだぜ」人の混雑する広小路を横切り、薬研堀(やげんぼり)から旗本の小屋敷のあいだを、住吉町のほうへぬけていった...
山本周五郎 「五瓣の椿」
...いい面の皮だ」「あんなにお若くておきれいでいて...
山本周五郎 「五瓣の椿」
...いい面の皮だ」ほうほうの態で...
吉川英治 「剣難女難」
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