...自分の呼気(いき)が温かな靄(もや)の様に顔を撫でる...
石川啄木 「菊池君」
...殷紅血を流すが如き夕燒の空を背にして進みゆくほどに、暮靄、乾坤を封じて、老杉の下の小路くらく、燈を點ずる頃、鹿野山宿に達す...
大町桂月 「房州紀行」
...そのピンクの靄がゆらゆら流れて...
太宰治 「女生徒」
...軽い靄(もや)が空中を過ぎてゆく...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...靄(もや)と暗さとは決して幸福な人々の好むものではない...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...と米友は心得面(こころえがお)に杖槍を拾い上げたが、その犬に似た真黒いものの影は、靄の中に消えて、唸り声だけが尾を引いて物凄(ものすご)い...
中里介山 「大菩薩峠」
......
長塚節 「長塚節歌集 中」
...乳色(ちゝいろ)の夜靄(よもや)立(た)ち罩(こ)めた上海(シヤンハイ)のあの茶館(ツアコハン)の窓際(まどぎは)で聞(き)いた麻雀牌(マアジヤンパイ)の好(この)ましい音(おと)は今(いま)も僕(ぼく)の胸底(きようてい)に懷(なつか)しい支那風(しなふう)を思(おも)ひ出(だ)させずにはおかない...
南部修太郎 「麻雀を語る」
...観照が主観の靄(もや)でかすんでいるため...
萩原朔太郎 「詩の原理」
...すると青緑色の靄(もや)が立罩(たちこ)めた薄暗い光線の中に...
原民喜 「壊滅の序曲」
...……頼むぜ」「わかっております」たちかけた夕靄の中へ...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...颯つと私達を追ひ越して夕靄を衝いて行つた...
牧野信一 「剥製」
...不意に北から吹き出した風で靄がぬぐい去られた時...
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod 松村みね子訳 「剣のうた」
...二十六年の来し方が夜明け前の朝靄に包まれていたとすれば...
山本周五郎 「菊屋敷」
...靄は地上二尺ほどのところをいちめんに蔽(おお)い...
山本周五郎 「橋の下」
...夜更けて帰る濠ばたの柳の靄の水浅葱(みづあさぎ)...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
...夕靄(ゆうもや)につつまれていた...
吉川英治 「新書太閤記」
...四国連山や西海岸の線は赤々と冬靄のうちだった...
吉川英治 「随筆 新平家」
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