...人つ子一人(ひとり)通らない雨降りの大久保(おほくぼ)を帰つて来るのに辟易(へきえき)したことを覚えてゐる...
芥川龍之介 「「仮面」の人々」
...けふは晝頃に目を覺ましそれから遠藤の「日高膽振觀」を書き出したが、筆を運ぶ間に、一つには、雨降りで、何となく寒い爲めでもあらう、氣がゆるむと同時に、由仁(ゆに)へ行つたお鳥のことが思ひ出されて、なかなか段落が進まない...
岩野泡鳴 「泡鳴五部作」
...花の雨降りこめられて謡(うたい)かな昭和七年四月十二日 京都石田旅館にあり...
高浜虚子 「五百句」
...三日は雨降りで、東京駅へ送りに行こうかと思ったが、見送りの人がたくさんいるなかの、恰好のつかない私の恰好を想像すると、到底行けるものでなく、その時刻に私はアパートの窓から外を眺めていた...
高見順 「如何なる星の下に」
...雨降りだと、雲煙が深く山を封してゐるから、折角山へ入つても山を見ることはできず、よほど厳重な雨支度をしてゐない限り、からだはびしよ濡れになつて、大概の人は風邪をひいてしまふ...
徳田秋聲 「霧ヶ峰から鷲ヶ峰へ」
...雨降りにその姿を見かける者はなかった...
豊島与志雄 「絶縁体」
...折から雨降り出したれば急ぎ停車場に戻り...
永井荷風 「断腸亭日乗」
...二十三青梅(おうめ)の裏宿の七兵衛は、この時分、裏宿の家におさまって、雨降り仕事に、土間へむしろを敷いて、藁(わら)を打って、しきりに草鞋(わらじ)をこしらえておりました...
中里介山 「大菩薩峠」
...ねんねこんぼは赤ンぼのこと)お腹が空いた雨降りや冷たい風吹きや 寒いピヨツピヨツピヨツ親鳥や来ないお腹(なか)が空(す)いたピヨツピヨツピヨツ蝶々のお家蝶々のお家(うち)は菜の花つづき菜の葉の中をちら ちーらと菜の葉の上をひら ひーらと蝶々は毎日帰つていつたとんぼとんぼ来い来い釣瓶(つるべ)にとまれ井戸の釣瓶は日が永い...
野口雨情 「未刊童謡」
...雨降りつてわけでもないでせうね……...
林芙美子 「浮雲」
...椿散る紅椿散る椿散る細き雨降り鶯鳴けばこれは音楽である...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...雨降りに限る...
二葉亭四迷 「平凡」
...かの「五月雨(さみだれ)に年中の雨降り尽くし」と吟(よ)んだ通り...
南方熊楠 「十二支考」
...それにしても雨降りよりは増しだ...
宮本百合子 「一太と母」
...でも雨降りの夜であったことがないのは面白いこと...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...鳥は一般に雨降り前に多く啼くためか...
柳田國男 「野草雑記・野鳥雑記」
...雨降りの時は流れになる水のない河の跡が幾すじも露出している...
吉川英治 「宮本武蔵」
...なだれたち雪とけそめし荒山に雲のいそぎて雨降りそそぐ上野(かうづけ)榛名(はるな)山上榛名湖にて...
若山牧水 「樹木とその葉」
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