...その目からはほろほろと煮えるような涙が流れて...
有島武郎 「或る女」
...涙が煮える...
太宰治 「狂言の神」
...三ツ輪の座敷に足を伸ばすとすき焼の鍋(なべ)の煮えるあいだも無駄に放っては置けないのであった...
谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」
...……(九日)・うれしいことでもありさうな朝日がこゝまで・はたしてうれしいことがあつたよこうろぎよ・飛行機はるかに通りすぎるこほろぎ・つめたくあはただしくてふてふ・ひつそりとおだやかな味噌汁煮える・百舌鳥もこほろぎも今日の幸福・水をわたる誰にともなくさようなら・月の澄みやうは熟柿落ちようとして・酔ひざめの風のかなしく吹きぬける(改作)十月十日晴――曇...
種田山頭火 「其中日記」
...油の煮える匂など...
中勘助 「銀の匙」
...こんろにかけた鍋のなかからぽつぽつと湯気のたつ鰈を煮えるにしたがつてはさんできて もういらない といふのを「そんなことはいはすとたんとたべとくれ」といひながらたうとうづらりと皿一面に並べてしまつた...
中勘助 「銀の匙」
...焜炉のまえに坐って煮える音をきくともなくきいてるうちにはらはらと涙がこぼれかかった...
中勘助 「島守」
...その頭どうじゃ」「はらの煮える...
中里介山 「大菩薩峠」
...藪入(やぶいり)の夢や小豆(あずき)の煮えるうち藪入で休暇をもらった小僧が...
萩原朔太郎 「郷愁の詩人 与謝蕪村」
...おえんまさまの舌は一丈まっかな夕陽煮えるような空気の底哀しみのしみこんだ鼻のかたちその向うに発射する一つのきらめき別に生きようとも思わぬたださらさらと邪魔にならぬような生存おぼつかない冥土(めいど)の細道からあるかなきかのけぶり けぶり推察するようなただよいもなく私の青春は朽ちて灰になる...
林芙美子 「新版 放浪記」
...御飯の煮える間に...
林芙美子 「放浪記(初出)」
...米の煮える香気が軒並みにあふれて来だしたのだ...
本庄陸男 「石狩川」
...「かれらがべんべんとパンの焼けるのやシチューの煮えるのを待ってるあいだに...
山本周五郎 「季節のない街」
...そして大きな切炉(きりろ)の膠鍋(にかわなべ)から膠の煮えるにおいと薪(まき)のいぶりがむうとするほどな物をたちこめていた...
吉川英治 「私本太平記」
...直義は煮えるような怒気(どき)と淋しさとにくるまれた...
吉川英治 「私本太平記」
...業(ごう)の煮える奴は...
吉川英治 「親鸞」
...汁に煮える葱(ねぎ)のかおりで...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...寝てなどいられるものか」「いやその間(ま)に、粥が煮える...
吉川英治 「牢獄の花嫁」
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