...塀の前を、用水が流るるために、波打つばかり、窓掛に合歓(ねむ)の花の影こそ揺れ揺れ通え、差覗く人目は届かぬから、縁の雨戸は開けたままで、心置なく飲めるのを、あれだけの酒好(ずき)が、なぜか、夫人の居ない時は、硝子杯(コップ)へ注(つ)ける口も苦そうに、差置いて、どうやら鬱(ふさ)ぐらしい...
泉鏡花 「婦系図」
...いつ頃から疊替をせぬのか波打つたやうになつて居る上に處々破れたのが反古で張つてあつた...
高濱虚子 「續俳諧師」
......
峠三吉 「原爆詩集」
...波打つ金髪が肩にかかり...
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー Marie Louise de la Ramee 荒木光二郎訳 「フランダースの犬」
...軍服をつけ銃を肩に立ち上がったこの姿を見よ沈着と決意に動かぬこの勢揃いを見よ彼女らの全身の血の集中!すべてを明日に未来にかけ今日立ちふさぐ我ら日本の女我らの目はあつく燃える正義と愛と憎しみとに波打つその立派なたくましい彼女らの整列の上に...
中野鈴子 「スペインの女」
...今やそれを横ぎって横に幾つもの皺が波打つようになった...
野上豊一郎 「レンブラントの国」
...波打つ老女の背中を...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...あの写真は掘立小屋の揺らぐテントの蔭の木のベツドで注射の円い肩が波打つてゐた...
原民喜 「火の子供」
...それからダイアナの波打つ捲毛に押しつけられてゐた...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...大きな呼吸で波打つてゐます...
牧野信一 「晩春の健康」
...彼は家の主婦の所へ歩み寄って――何人(なんぴと)といえども、彼のごとくしなやかに、波打つように、うねるように、威風堂々と歩くことはできない――腰を屈(かが)めながら、手を差し伸べてくれるのを待つ...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トニオ・クレエゲル」
...その清らかな胸に波打つふくよかな呼吸……...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...天幕の波打つ峯と峯との間から突如として飛び上るフットボール...
横光利一 「上海」
...卑狗の波打つ胸の力を感じると...
横光利一 「日輪」
...その下(もと)に波打つ幾線の鉄の縄(なは)が世界の隅隅(すみ/″\)までを繋(つな)ぎ合せ...
與謝野寛、與謝野晶子 「巴里より」
...家々の壁に沿つて風に波打つてゐた花を刺した白幕...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...小さい声が波打つばかりで...
吉川英治 「新書太閤記」
...悪ふざけのように群葉が波打つファンタスティックな様を見ることができた...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「時間からの影」
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