...物言はぬ人のみ住んでゐるかとばかり森閑としてゐる秋の真昼の山村の空気を揺がして...
石川啄木 「道」
...三時か四時ごろのカフェーにはまだ吸血鬼の粉黛(ふんたい)の香もなく森閑としてどうかするとねずみが出るくらいであった...
寺田寅彦 「コーヒー哲学序説」
...広い寺の境内は森閑として...
中里介山 「大菩薩峠」
...森閑として動かない...
林芙美子 「浮雲」
...皇族がお通りだと云うので街は水を打ったように森閑となる...
林芙美子 「新版 放浪記」
...神に平伏してゐるやうな森閑としたかつかうだつた...
林芙美子 「下町」
...四圍が森閑としてゐるせゐか...
林芙美子 「屋久島紀行」
...客らしいものの姿もなく森閑としている...
久生十蘭 「ノア」
...森閑とした日曜日の官邸内の居室に幣原さんはひとりで坐っておられた...
前田多門 「「人間宣言」のうちそと」
...窓から広場の先へ見える教会堂の時計台が弦月の薄霞の中に森閑とたたずみ...
牧野信一 「サクラの花びら」
...朧月の森閑とした屋敷道だつた...
牧野信一 「サクラの花びら」
...森閑として木下闇(このしたやみ)に枯葉を踏む自分の足音が幾度か耳を脅かした...
水上滝太郎 「山の手の子」
...木蔭(こかげ)の少ない町中は瓦屋根にキラキラと残暑が光って亀裂(きれつ)の出来た往来は通り魔のした後のように時々一人として行人の影を止めないで森閑としてしまう...
水上滝太郎 「山の手の子」
...家のぐるりは森閑とし空がひろびろと感じられる...
宮本百合子 「折たく柴」
...庭先きの森閑とした昼過ぎに...
室生犀星 「とかげ」
...国老の屋敷は森閑と鎮りかえっていた……胸に喰込むような...
山本周五郎 「夜明けの辻」
...人聲もずぼずぼと沈んだやうに森閑となつてしまつた...
横光利一 「榛名」
...この森閑として仄暗いバー・オパールの壁にたてかけて見せたその画は...
蘭郁二郎 「白金神経の少女」
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