...」と莞爾(にっこり)した、その唇の紅を染めたように、酸漿を指に取って、衣紋(えもん)を軽(かろ)く拊(う)ちながら、「憎らしい、お源や…………」来て御覧、と呼ぼうとして、声が出たのを、圧(おさ)えて酸漿をまた吸った...
泉鏡花 「婦系図」
...なんて憎らしい用心深さでしょう...
江戸川乱歩 「断崖」
...「いや! 乱暴ね」「素人みたいなことを言うない」「憎らしい...
高見順 「いやな感じ」
...ぼくは自分の商売が憎らしいのに決っています...
太宰治 「虚構の春」
...羨しいような小憎らしいような感情が起ってきた...
豊島与志雄 「或る男の手記」
...あの奥方気取りで……憎らしいッ」お銀様は頭を自棄(やけ)に振って...
中里介山 「大菩薩峠」
...ははははは」主膳は憎らしい毒口を吐きかけました...
中里介山 「大菩薩峠」
...あの憎らしいのが...
中里介山 「大菩薩峠」
...憎らしいもんです」「がんりき」「はい」「その酒をここへブチまけてしまえ」神尾主膳はなんとなく焦(じ)れ出してきたように見える...
中里介山 「大菩薩峠」
...こんな憎らしい小娘と一緒に……」「は...
中里介山 「大菩薩峠」
...夜廻りの拍子木の音を聞くと、兵馬は膝を立て直し、「それはそうと、もう時刻も遅い、お暇(いとま)します、冗談はさて置いてそれをお返し下さい」真剣そのもので、福松がさいぜんから後生大事に抱え込んでいる両刀を指して促すと、福松どのは、一層深く抱え込んで、頭(かぶり)を振り、「いけません」「冗談もいいかげんにしなさい」「冗談ではございません――わたしは真剣に申し上げているんでございますよ」「では、どうしようと言うんだ」「今晩はあなたをお帰し申しません」「帰さないというて、ここは拙者の泊るところではない」「はい、あなた方のお泊りになるところではございません、あなた様にはほんとうにお羨ましいお宅がおありでいらっしゃいます、でもたまにはよろしいじゃございませんか、今晩はおいやでもこちらへお泊りあそばせな」「何を言ってるのだ」「あなたもずいぶん罪なお方ねえ」「たわごとを言わず、穏かに言っている間に、返すものをお返しなさい」「ねえ、宇津木様、わたし今晩は大へんしつっこいでしょう、わたしだって張店(はりみせ)のおばさんみたように、こんなしつっこい真似(まね)はしたくはないんですけれど、そうして上げなければあなたのおためにはならないわけがあるんですから、こうしてあげるのよ、今晩は泊っていらっしゃい」「滅相な」「あなたはそんなきまじめなお面で、うぶな御様子をなさいますけれど、本当のところは、どうしてずいぶんな罪作り――残らずこっちには種があがっていますから、それを白状なさらなければかえして上げません」「何か、拙者が後暗いことでもしていると申されるのか」「ええ、そうでございますとも、あなたという人こそ本当に見かけによらない、イヤな人です、憎らしいお方、もうすっかり種が上っていますから隠したってだめよ」「そちらに種が上っているのなら、なにも改めて拙者にたずねるには及ぶまい――どれ」兵馬は苛立(いらだ)って、もう、こうなる上は、手ごめにしても刀を奪い取って差して帰るまでのことだ――と立ちかけた時、「ア、痛ッ!」と不覚の叫びを立てたのは、相手の女ではなくてかえって自分でした...
中里介山 「大菩薩峠」
...けっきょく憎らしいくらい丈夫になったわけである...
中谷宇吉郎 「ジストマ退治の話」
...その態度が憎らしいので...
夏目漱石 「道草」
...貧乏人の餓鬼までついて来たので憎らしいといふ顔付をしたが...
新美南吉 「良寛物語 手毬と鉢の子」
...あんなに憎らしいゼーロンではあるが...
牧野信一 「夜見の巻」
...あの憎らしい広海屋を目の前に...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...彼より憎らしい女になる時がある代り...
宮本百合子 「有島武郎の死によせて」
...憎らしいとお思いになる?」「それほどでもないけど...
室生犀星 「蜜のあわれ」
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