...その様子を心なしか...
大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子 「消えた霊媒女」
...その中、ぼくの名前でも一通、「おや、これは日本からとは違(ちが)うぞ」とぼくを見た、黒井さんの眼が、心なしか、光った気がしました...
田中英光 「オリンポスの果実」
...心なしか今迄懇意にしていた人々が急に自分を妙な眼で見始めたような気がしてならなかったのに...
谷崎潤一郎 「細雪」
...心なしか母の顔に疲れ切つた様子が薄い膜のやうに出て来はじめたのを民子が気にかけてゐる中に...
田畑修一郎 「鳥羽家の子供」
...大分離れてゐるので、表情迄は分らないが、今はもうすつかり縛(いまし)めを解かれて、心なしか、明るく元氣になつたらしく見える...
中島敦 「環礁」
...心なしか今日は十勝の噴煙も高々と立っているようである...
中谷宇吉郎 「雪後記」
...心なしか、行手の藪蔭、木立の隙間、百姓家の角などに、時々チラと若い女の後ろ姿を見掛けるような気がしたのでした...
野村胡堂 「江戸の火術」
...本当に怖ろしいことでございます」和七は心なしか...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...心なしか、その端正な顏が蒼くなつて、心持ち、謠(うたひ)で鍛(きた)へた、素晴らしい次低音(バリトーン)も顫へてゐるやうです...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...心なしか見る目に寂しげな影が濃く出ている...
長谷川時雨 「松井須磨子」
...斜面を下りながら、彦太郎は、麦藁帽子(むぎわらぼうし)の縁に手をかけて空を見あげ、一雨来るかも知れんと思い、灼(や)けるように陽炎(かげろう)をあげている周囲を見わたすと、心なしか、さっと、一陣の冷たい風が来て西瓜(すいか)畑の葉を鳴らした...
火野葦平 「糞尿譚」
...心なしか潤んでいた...
三木清 「西田先生のことども」
...心なしかほっと安堵(あんど)したような色が眼にあらわれるのを私は見たと思った...
山本周五郎 「日本婦道記」
...心なしかその睫毛のない眼をしばだたいて...
吉川英治 「大谷刑部」
...心なしかワッという鬨(とき)の声(こえ)と共に...
吉川英治 「剣難女難」
...心なしか、こよいはことに砦(とりで)のうえに、いちまつの殺気がみち満ちていた...
吉川英治 「神州天馬侠」
...心なしかその涙をふくんでいるように聞え...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
...心なしか浜川の海岸へ立って...
吉川英治 「鳴門秘帖」
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