...友達や召使が無くて残されたものは埋葬されないで街路や寂れた家に残される...
ジェイムズ・サンヅ・エリオット James Sands Elliott 水上茂樹訳 「ギリシャおよびローマ医学の概観」
...しらじらと寂れた風物のなかに...
薄田泣菫 「独楽園」
...近県の寂れた宿場町や...
武田麟太郎 「大凶の籤」
...寂れた町の隅々まで...
太宰治 「老ハイデルベルヒ」
...十一月廿八日晴、近郊探勝、行程三里、香春町(二五・中)昨日もうらゝかな日和であつたが、今日はもつとほがらかなお天気である、歩いてゐて、しみ/″\歩くことの幸福を感じさせられた、明夜は句会、それまで近郊を歩くつもりで、八時緑平居を出る、どうも近来、停滞し勝ちで、あんまり安易に狎れたやうである、一日歩かなければ一日の堕落だ、などゝ考へながら河に沿うて伊田の方へのぼる、とても行乞なんか出来るものぢやない(緑平さんが、ちやんとドヤ銭とキス代とを下さつた、下さつたといへば星城子さんからも草鞋銭をいたゞいた)、このあたりの眺望は好きだ、山も水も草もよい、平凡で、そして何ともいへないものを蔵してゐる、朝霧にほんのりと浮びあがる香春、一ノ岳二ノ岳三ノ岳の姿にもひきつけられた、ボタ山が鋭角を空へつきだしてゐる形もおもしろい(この記事も亦、別に書かう、秋ところ/″\の一節として書くに足るものだ)、ぶらりぶらり歩く、一歩は一歩のうらゝかさやすらかさである、句を拾つて来なさいといつて下さつた緑平さんの友情を思ひながら、――いつのまにか伊田まで来たが、展覧会があつた後で、何だかごた/\ゐ(マヽ)る、おちついて寝られるやうな宿がありさうにもないので、橋を渡つて香春へ向いてゆく、この道も悪くない、平凡のうれしさを十分に味ふ、香春岳はやつぱりいゝ、しかし私には少し奇峭に過ぎないでもない、それに対してなだらかな山なみが、より親しまれる、そのところ/″\の雑木紅葉がうつくしい(香春岳は遠くからか、或は近くから眺めるべき山だ、緑平居あたりからの遠山がよい、また、こゝまできて見あげてもよい)、十一時にはもう香春の町へ着いた、寂れた街である、久振に蕎麦を食べる、宿をとるにはまだ早すぎるので、街を出はづれて、高座寺へ詣る、石寺とよばれてゐるだけに、附近には岩石が多い、梅も多い、清閑を楽しむには持つてこいの場所だ、散り残つてゐる楓の一樹二樹の風情も捨てがたいものだつた(この辺は今春、暮れてから緑平さんにひつぱりまはされたところだ、また、因に書いておく、香春岳全山は禁猟地で、猿が数百匹野生して残存してゐる、見物に登らうかとも思つたが、あまり気乗りがしないので、やめた、二三十匹乃至二三百匹の野生猿が群がり遊んでゐる話を宿の主人から聞かされた)...
種田山頭火 「行乞記」
...寂れた街道を通りぬけて...
近松秋江 「狂乱」
...山国のこの寂れた町に涼気(すずけ)が立って来るにつれて...
徳田秋声 「あらくれ」
...この寂れた淋しい町に...
徳田秋声 「新世帯」
...寂れた床屋の前を通る時には...
徳田秋声 「新世帯」
...時とすると広い寂れた通りで...
徳田秋声 「黴」
...物寂れた家のなかに...
徳田秋声 「爛」
...アトリヱの丘つゞきにある寂れた寺の住職で此処から歌が聞えると...
牧野信一 「心象風景」
...下町の活々した街から追詰(おひこく)られて来たと思ふ寂れた古本屋や...
眞山青果 「茗荷畠」
...「寂れた沈着(おちつき)の無い町だ...
眞山青果 「茗荷畠」
...顔だけを差し出した妙な寂れた堀の姿は...
室生犀星 「蛾」
便利!手書き漢字入力検索