...自分よりもずっと低級な夫――皆の顔をそこに目の前にまざまざと並べるともう登志子は頭がイライラしてきて何となしに歯をかみならして遣り場のない身悶をやけに足に力を入れて遣りすごした...
伊藤野枝 「わがまま」
...どういうものか何となしに仲が悪く...
高村光太郎 「回想録」
...窕子は何となしに佗びしさうに見えた...
田山花袋 「道綱の母」
...何となしに鬼ヶ島を思わせた...
寺田寅彦 「異郷」
...何となしにうららかに賑わっていた...
寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
...何となしに閑寂な趣のある好い土地だと思ふ...
寺田寅彦 「寫生紀行」
...何となしにジャン・バルジャンを読ませようとしたのも...
徳田秋声 「縮図」
...何となしに物足りなかった...
徳永直 「戦争雑記」
...それも、私の方がさきに、何となしに、物怯気(ものおじけ)していた...
徳永直 「戦争雑記」
...それでも、その大連行きということも、結局は気紛れな想像にすぎなかったが、或る日姐さんから少し手きびしい注意を受けて、この頃のお前さんの評判はとてもよくないとか、いつまでもそんなじゃあ家においとくわけにはいかないなどと云われると、急に淋しくなって、何となしに、おばさんに――おしげに――電話をかけてしまった...
豊島与志雄 「死の前後」
...やつれが見えて何となしに痛わしいが...
中里介山 「大菩薩峠」
...その挙動が何となしに尋常でないことを想わせられてなりません...
中里介山 「大菩薩峠」
...何となしに甲州一国を髣髴(ほうふつ)させるのが山科の風景である...
中里介山 「大菩薩峠」
...弥之助は四十何年も昔の葬式の事が何となしに思い出されて来た...
中里介山 「百姓弥之助の話」
...何となしにいそいそしました...
フランセス・ホッヂソン・バァネット Frances Hodgeson Burnett 菊池寛訳 「小公女」
...いまも何となしに正三に安堵の感を抱かせるのであつた...
原民喜 「壊滅の序曲」
...これは僕が学生の頃下宿してゐた六畳の部屋に似てゐて、何となしに、この世のはてのやうな孤独の澱みが感じられる...
原民喜 「災厄の日」
...何となしに物をせしめるというような結果にもなるわけです...
宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
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