...故郷へかえって山など駈け歩いたものですから」娘はあどけない笑顔で答えた...
「草藪」
...彼女はその鋭い視線を避けるように身をすぼめ、あどけない、ふっくらとした面立(おもだ)ちを伏せて、早く恐ろしいものゝ通り過ぎるのを祈っているような風であったが、河内介は、彼女の肩を蔽うているつや/\しい黒髪と、膝の上に置かれた手の、すぐれて白く細長い指の線とを見守っているうちに、再びあの痙攣のような薄笑いを口元に浮かべて、「お久」と呼んだ...
谷崎潤一郎 「武州公秘話」
...あるあどけない若女房(わかにょうぼう)で...
谷崎潤一郎 「吉野葛」
...それはもう今までのあどけない約束ではなくて...
永井荷風 「すみだ川」
...それから手拭(てぬぐひ)の下(した)から見(み)えるおつぎのあどけない顏(かほ)を凝然(ぢつ)と見(み)た...
長塚節 「土」
...あどけない顏は恐怖に引釣つて居りますが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...京人形のような顔をした、あどけない娘で、顎十郎とはごくごくの言葉敵(がたき)である...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...まだあどけない子供だったのに...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「くちなしの花」
...あどけない雲が、きよめられ、光をにじませながら、奉仕する愛の童神たちのように、ばらいろの、うす青いもやのなかに浮動している...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「ヴェニスに死す」
...ベスのあどけない音楽は...
ルイザ・メイ・オルコット L. M. Alcott 水谷まさる訳 「若草物語」
...始終ニコニコと笑っているこのあどけない顔が良人を誘惑するてだったのか...
矢田津世子 「女心拾遺」
...笑窪のよったあどけない顔で...
矢田津世子 「※[#「やまいだれ+句」、第4水準2-81-44]女抄録」
...斯んな無心にあどけない年齡の頃にあることを...
柳田國男 「兒童語彙解説」
...あどけない一方の児であったが...
夢野久作 「人の顔」
...まだどこやらあどけない少年将軍の眉だったが...
吉川英治 「私本太平記」
...あんなあどけない容子(ようす)もありながら...
吉川英治 「新書太閤記」
...(あどけないものよ)と...
吉川英治 「源頼朝」
...受難のあどけない小さな顔を大きな羽根枕でふさいで...
神西清訳 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
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