2023年3月23日、カナダのバンクーバーアイランド沿岸のラグーンに一か月以上も閉じ込められたシャチの子どもが、ついに4月上旬の満潮に乗って海へと戻りました。母親を失った後、狭い水路に迷い込んでしまったこのシャチのためにEhattesaht First Nation(先住民コミュニティ)が中心となって連邦政府の専門家チームと連日救助活動が行われました。しかし、最終的には自然の力、満潮に乗って海へ泳ぎ出したのです。
日本では、シャチは主に水族館で見ることができ、野生のシャチが観察されるのは北海道や東北地方の沿岸部など限られた地域です。北海道根室市でシャチの群れが確認された2020年の事例は、貴重な観測として注目されましたが、カナダのようにシャチが頻繁に目撃される地域ではありません。カナダでは沿岸部でシャチと人間が直接関わる場合も多く、こうした孤立事故も発生します。
今回は文化的観点から、シャチにまつわる漢字「鯱」、「虎鯨」、「逆戟鯨」についてご紹介します。
鯱
読み方: 「しゃち」
意味: シャチを指す古い漢字表記で、オルカやキラー・ホエールとも呼ばれる海の哺乳類を指します。
由来: 「鯱」は日本や中国の古書に見られる表記で、特に日本では建築装飾品としても使用されてきました。主に屋根の鬼瓦や装飾として用いられ、魔除けや厄除けの象徴とされています。
虎鯨
読み方: 「とらげい」
意味: 直訳すると「虎の鯨」で、シャチの別名です。シャチが持つ独特の黒白の模様が虎の縞模様に似ていることからこの名が付けられました。
由来: シャチは獰猛さと美しさを兼ね備えた動物として知られ、その力強い狩猟スキルと社会的な行動が評価されています。虎のような力強いイメージから「虎鯨」とも呼ばれるようになりました。
逆戟鯨
読み方: 「ぎゃくげきげい」
意味: こちらもシャチを指す言葉で、戟(げき)は古代の武器の一種であり、「逆さの戟(しっぽの形が逆さまの戟に似ている)を持つ鯨」という意味が込められています。
由来: シャチの尾びれが水平であり、その形状が逆さまの戟(戦いの槍の一種)に見えることからこの名前がつけられました。また、シャチの強力で賢明な狩猟行動を武士の戟と結びつけて表現しています。
これらの漢字を知ってシャチに関する理解がさらに深まり、より興味深く感じていただけると幸いです。