...で、拭布(ふきん)を掛けたなり台所へ突出すと、押入続きに腰窓が低い、上の棚に立掛けた小さな姿見で、顔を映して、襟を、もう一息掻合わせ、ちょっと縮れて癖はあるが、髪結(かみゆい)も世辞ばかりでない、似合った丸髷(まるまげ)で、さて店へ出た段取だったが……――遠くの橋を牛車(うしぐるま)でも通るように、かたんかたんと、三崎座の昼芝居の、つけを打つのが合間に聞え、囃(はやし)の音がシャラシャラと路地裏の大溝(おおどぶ)へ響く...
泉鏡花 「薄紅梅」
...かたんとはげしい音をたてて停ってしまった...
海野十三 「火星探険」
...そのとき、千二のうしろで、かたんかたんと、金属のすれ合うような、ひびきがきこえた...
海野十三 「火星兵団」
...不意に、この戦車が、かたんと揺れた...
海野十三 「地底戦車の怪人」
...両方の箱のふたをかたんとしめ...
海野十三 「電気鳩」
...かたんという音をたてた...
リチャード・オースティン・フリーマン Richard Austin Freeman 妹尾韶夫訳 「オスカー・ブロズキー事件」
...とんかたんと機(はた)を織る音が聞える...
夏目漱石 「草枕」
...わかちがたき一つの心をふたつにわかたんとする大人(おとな)の心のうらさびしさよ...
萩原朔太郎 「月に吠える」
...彼がうっとりと空を見あげていると、かたんと音がし、横の潜戸(くぐりど)が開いた...
火野葦平 「糞尿譚」
...拍車をかたんと合わせて...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「ある幸福」
...シグナルの柱はかたんと白い腕木(うでき)を上げました...
宮沢賢治 「シグナルとシグナレス」
...かたんと高い音がした)老人は痩せていて...
山本周五郎 「赤ひげ診療譚」
...かたんと、音がしたようであったが、返辞(へんじ)がないので、「栗鼠(りす)か」と、つぶやいた...
吉川英治 「親鸞」
...小袖をかぶったまま、鷺(さぎ)のように、舳(みよし)に屈んでいた男は、振り向いた弾みに、刀の鐺(こじり)を、かたんと、屋形の角に音をさせて、「何、ここで……...
吉川英治 「無宿人国記」
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