...「これじゃ(といってほこりにまみれた両手をひろげ襟頸(えりくび)を抜き出すように延ばして見せて渋い顔をしながら)どこにも行けやせんわな」「だからあなたはお帰りなさいましといってるじゃありませんか」そう冒頭(まえおき)をして葉子は倉地と押し並んでそろそろ歩きながら...
有島武郎 「或る女」
...倉地に渋い顔ばかりはさせておかなかったろう...
有島武郎 「或る女」
...それは喉(のど)の奥から手の出そうな渋い顔だった...
有島武郎 「星座」
...渠は渋い顔をして...
石川啄木 「病院の窓」
...つい渋い顔になりますと...
太宰治 「男女同権」
...」叔父は渋い顔をして...
徳田秋声 「足迹」
...親分の渋い顔を見ると...
野村胡堂 「新奇談クラブ」
...味なことをしやがる」丸山捜査主任は渋い顔でうなずいた...
久生十蘭 「肌色の月」
...一寸渋い顔を示して...
牧野信一 「円卓子での話」
...才次は渋い顔をして口を噤(つぐ)んだ...
正宗白鳥 「入江のほとり」
...その花や葉っぱを甞めて渋い顔をしたりする...
松永延造 「職工と微笑」
...かなたの馭者は渋い顔をしてそれを受けた...
水野葉舟 「黄昏」
...渋い顔をしている積であったが...
森鴎外 「雁」
...八田忠晴が入塾したときの問答を思いだして渋い顔をし...
山本周五郎 「季節のない街」
...父は渋い顔をしたそうである...
山本周五郎 「はたし状」
...半之助が出勤するとすぐ図書助が渋い顔つきでそう云った...
山本周五郎 「半之助祝言」
...間違いはないと思います」徹之助はもっと渋い顔をした...
山本周五郎 「風流太平記」
...「おふくろか」と桜谷は酒を啜りながら、渋い顔をした、「そういうことを聞くと、自分のとしを思いだすよ」「そんなことよりも」と房二郎が云った、「あの木谷桜所と木原桜水の二人はなに者だい、木内さんとおれは朝から夕方まで、ずっと記事部屋に詰めっきりで、あることないこと書きどおしに書いてるのに、あの二人は好きなときに顔を出して、ちょっとした短けえ記事を放(ほう)り込んで、勝手にさっさと帰っちまう、あれはどういうことなんだい、木内さん」「二人はかけもちなんだ」と木内が云った、「瓦版屋を幾軒かかけもちにしていて、記事によって高く買う店と、安く買う店をうまくこなしてるのさ、文華堂へ持って来るのは安いほうのくちだが、その代りおれたちは、外廻りをしなくっても済むってえわけさ」「だって売り子が記事のたねを持って来るじゃねえか」「記事の取りかたが違うんだよ」と木内が云った、「房やんが今日書いた、深川の親子心中だって、――まあいいや、そのうちにわかってくるさ」三「だろうさ」と房二郎がやけになったような口ぶりで云った、「人間としをとればいろんなことがわかってくる、わかるにしたがって世の中がどんなにいやらしいか、人間がどんなにみじめなものか、ってことがはっきりするばかりだ」「生きてくってことは冗談ごとじゃあねえからな」「げにもっとも」と云って房二郎は、からになった燗徳利(かんどくり)を取って振った、「おやじ、酒だ」「だめです」ととんびのあるじはかたくなに云い返した、「うちは酒をあじわってもらう店で、酔っぱらうために飲ませるんじゃあねえんだから」つけ板のまわりにはほかに二人、お店者(たなもの)らしい中年の男が、この店のかみさんの酌でひっそりと飲んでいた...
山本周五郎 「へちまの木」
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