...四人は蝙蝠傘(こうもり)二本をよすがに船底に小さくなってしばらく雨やどりをする...
伊藤左千夫 「紅黄録」
...一つは作者自身の楽しき追憶(ついおく)のよすがにし...
海野十三 「『地球盗難』の作者の言葉」
...或ひは忘れてゐた昔の話を思ひ出すよすがにもならうと思ふ...
関根金次郎 「手数将棋」
...真の革命家であるFの面影をも偲ぶよすがにしたいと思った...
辰野隆 「二人のセルヴィヤ人」
...調子の高いひびきの方がいくらか琴の音をしのばせるよすがにもなる...
谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」
...それもさして心を引きたてるよすがにはならなかった...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...さすがの我も聊(いささ)か疲労しかつはまたこの上強(し)ひんには礼を失するに至らん事を虞(おそ)れせめてわが芝居道熱心の微衷(びちゅう)をだに開陳し置かばまた何かの折宿望を達するよすがにもなるべしと長々しき論文一篇を草しそつと玄関の敷台に差置きて立ち去りぬ...
永井荷風 「書かでもの記」
...あの味がかえって磯のかおりを連想させるよすがになる...
中谷宇吉郎 「塩の風趣」
...豐公一代の豪奢の跡をしのぶよすがには...
羽田亨 「聚樂廻り」
...必らずしもその老朽を防ぐよすがにはなりそうもない黝(くす)んだ屋根の上には...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...忘れな結び用事を忘れず思ひ出すよすがに...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...彼が在郷中の苦痛を和(やわら)げんよすがにもと...
福田英子 「妾の半生涯」
...ここで別れたと追想するよすがにしたい気持であった...
本庄陸男 「石狩川」
...思考上の焦点を求めるよすがには...
牧野信一 「断酒片」
...阪地に病みて久しい三遊亭圓馬(三代目)慰むる会を催したことをよすがに...
正岡容 「随筆 寄席風俗」
...兄も……弟も労咳(ろうがい)で臥せっておりまする中にタッタ一人の妾(わたくし)が……聊(いささ)か小太刀の心得が御座いますのを……よすがに致しまして...
夢野久作 「斬られたさに」
...よすがに」「これを持て」もう高氏は慌てていた...
吉川英治 「私本太平記」
...せめて月をよすがにせむと...
吉川英治 「新書太閤記」
便利!手書き漢字入力検索