...……それにしても...
江戸川乱歩 「大金塊」
...「そうですよ、ありゃ狂人(きちがい)ですよ、あれから豪(えら)いことがありましたよ、あなたは御存じないのでしょう」「ちっとも存じません、私を追いかけて来るようでしたから、変な巷(ろじ)を抜けて逃げてまいりましたわ、何かありまして」「あなたの後(あと)から、追っかけるようにして出て、あの前(さき)で咽喉(のど)を突いて死んだと云うのですよ、私は見なかったが、婢(じょちゅう)が後(あと)から往って、見て来ての話でしたよ、どうも狂人(きちがい)ですね」「ま、咽喉を突いて、どうしたと云うのでしょう、可哀そうでございますの、ね」「可哀そうですよ、私のテーブルへ来て靺鞨(まっかつ)の玉(たま)と云うのを人に盗まれたから、それを探して、東洋の港から港をさまようていると云ったのですよ、へんな夢のようなことを云ってましたから、どうしても狂人(きちがい)ですね」「そうでしょうか、それにしても、可哀そうじゃございませんか、どこの方(かた)でしょう」「さあ、どうも支那人らしいです、ね」「そうでございましょうか」謙作はこの時、この女は思ったような女でないと思って軽い失望を感じた...
田中貢太郎 「港の妖婦」
...それにしても不思議な心持ちがしないではいられない...
寺田寅彦 「病室の花」
...それにしても、なぜおまえはわしらの邪魔をしに来たのだ? おまえはわしらの邪魔をしに来たのだ...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...それにしても今日のはあまりに無茶です...
中里介山 「大菩薩峠」
...それにしても明朝でよかろうではないか...
中里介山 「大菩薩峠」
...「それにしても大變な力ぢやないか...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...それにしても葱一本とは――すると妹が説明した...
長谷川時雨 「北京の生活」
...パーマネントの流行(はやり)と逆にいったところが味噌(みそ)なのだが、それにしても、濡れた着物のようにピッタリと皮膚にまといついた、ジュニヤ好みのプリンセス型のドレスとよくうつって、なかなか凄艶(せいえん)な感じに見せる...
久生十蘭 「キャラコさん」
...それにしてもダンスはその後どうなっているのか...
久生十蘭 「だいこん」
...不合理というものはどこにもあり勝ちなことだから――だがそれにしても...
ニコライ・ゴーゴリ 平井肇訳 「鼻」
...それにしても、サンドリヨンは、どんなに、きたない身なりはしていても、美しく着かざったふたりのきょうだいたちにくらべては、百そうばいもきれいでしたし、まして心のうつくしさは、くらべものになりませんでした...
ペロー Perrault 楠山正雄訳 「灰だらけ姫」
...それにしても彼は二人の間に何か並べたいやうな心そゝりを覺えて...
水野仙子 「醉ひたる商人」
...それにしても僕はどうして知らない間にこゝまで送り返されてしまつたのであらう...
村山槐多 「殺人行者」
...それにしても病院中が森閑(しんかん)となっているのだから...
夢野久作 「一足お先に」
...それにしても此の女性は...
横光利一 「火の点いた煙草」
...それにしても、なお彼に残念なことが一つだけ、頭の底から絶えず脱けず彼を追って来た...
横光利一 「旅愁」
...それにしても、何んと念うことの多く、することの出来がたかった世界だったことだろう...
横光利一 「旅愁」
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